好物の牡蠣

去年かな
パパの街に 牡蠣センターなる店がオープン
蒸し牡蠣 ホタテ などが食べれる
奈里ちゃんは 牡蠣が大好き
牡蠣は冷凍なんだろうけど なかなか美味い


殻付き牡蠣を お取り寄せしたほうが 安上がりだよねってことで
色んな地方の牡蠣を取り寄せてた
満足だったのは 広島 兵庫 の牡蠣かな


そろそろ牡蠣の時期


奈里ちゃん 食べたいかな


と思いつつ まずは宮城県産


届いた牡蠣は 見事な大きさ

奈里ちゃんがやってたように
蒸し器で


殻をあけると



なにこれ


ショボ過ぎ


騙された気分


奈里ちゃんの 怒った顔が 目に浮かぶ


次は 広島産を注文するね



人間ドック受けてれば助かったのかな

くも膜下出血
後頭部を 金属バットで殴られたような 激痛があるらしい
突然意識を失ったのか
しばらく痛みに耐えていて だんだん意識が遠のいたのか
今では 聞く術もない


せめて 願うなら 痛みも感じることもなく
そうであってほしい


でないと 奈里ちゃんは きっと パパに
「助けて 痛いよ パパ助けて」
声が出ないまでも 心で 助けを求めていたに 違いない


そんなに なってるとも知らずに  
寝ていたパパ


もし すぐに 気づいて
救急車を呼んでたら 助かったのかな


考えても きりがないけど
悔やまれる


人間ドック ちゃんと 隅々まで 検査してたら
新田恵利みたいに 助かったのかな


奈里ちゃんが 死んじゃったのは パパのせい
パパは 世界で1番 大切な人を 自分で殺したのかも
最近 そう思う
パパの 周りの人 結構な割合で 人間ドック受けてる
1年に1回ほど
ちゃんと 受けてれば 動脈瘤が見つかって
手術すれば 治ったかもしれない
その可能性を パパは潰した


言葉では


愛してるだの
大好きだの


言っておきながら


奈里ちゃんを ないがしろに してたんだ
大切な奈里ちゃんだったのに
取り返しのつかない事をしてしまった
もう どうしようもない


ずっと暗闇の中に

奈里ちゃんが いなくなってから 160日
160日か
長いやら 短いやら よくわからない
時間の感覚が なくなっている感じ
朝起きて やるべきことをこなしていると 10時位になってしまう
奈里ちゃんの遺骨を見つめて ぼーっとしてる
ぼーっと というより 放心状態になる
最近 そんなことが多い
放心状態になのに 突然 悲しみが襲ってくる
叫ぶ 泣く 咽る
また放心
その繰り返し
気づくと 夕方近くになってる
精神病かな
まともではない事は 確かだ
何もする気がおきない
仕事も 放棄してる状態だから 入金もない
そのうち貯金も底をつく
まあ どうでもいいかな
もう疲れてしまった
このまま生きていて 何の意味があるんだろう
いや 意味なんか ないんだろう
ただ 心臓が 動くから 生きてる
脳が 丈夫だから 
ただ それだけ
奈里ちゃんを喪い
深い闇に落ちて
その暗闇の中
ぼーってしてるだけ
抜け出そうとも 思わない
パパは 悲しみたいんだ
奈里ちゃんを喪ったことを 悲しみたいんだ
泣きたいんだ
叫びたいんだ
いつまで続くかわからないけど
パパは 死ぬまで 泣き続ける
周りの人は 時間が解決してくれる そのうち いい人ができるよ
ほぼみんなが そんな 軽口をたたく
おまえは そうでしょう
パパは違うんだよ
パパには 奈里ちゃんしか いないんだよ
これからもずっと
奈里ちゃんだけなんだよ
だから ずっと この闇の中にいる
それでいいんだ
そうしたいんだ